鉄棒と言えば「さか上がり」というほど、子どもにとっては憧れであり、一つの大きな目標となります。
うちの子、運動が苦手なの。さか上がりなんてとんでもないわ。
何からしたらいいのかしら。
さか上がりは運動が得意な子でもできないということがあるくらいです。
ポイントは継続力とスモールステップということで、他の学習と同じですね。
鉄棒練習は今からがベストシーズンです。今まで、多くの子どもたちの運動能力と練習の様子、そして性格を見てきての見解となります。是非最後までご覧いただき、これからの練習の参考にしていただけたらと思います。
憧れのさか上がりができるようになって、お家の方とお子さんとで喜びを共有してほしいです。
春・秋がベストシーズンなわけ
鉄棒にはベストシーズンがあります。春と秋です。夏は鉄棒が熱くなり握れません。冬は冷たくて握れません。練習できる時期が限られてしまうのです。
鉄棒は数日ではできません。たまに、「○○さんが指導したら、1時間でできた!」など話題になることがありますが、それは、そのお子さんがそれまでに練習をしていたからでります。
確かに指導のコツはありますが、こつこつと練習を続けるということは必要です。
早くマスターしたいなら、体操教室に通うことです。そこまでお家の方、お子さんが望むかですが、そうでなければ、こつこつと公園や学校で練習を重ねていきましょう。
長期間の練習を確保するためにも、天候がよくなり鉄棒が握れるようになったら、すぐに練習を開始です。
運動好きな子は1年生でさか上がりを
低学年は「鉄棒あそび」で鉄棒に慣れる学習、中学年から本格的な技の練習となります。
しかし、中学年からいきなり技をマスターすることも難しいということで、低学年の間から技を練習することがあります。さか上がりは1年生でできなくてもよいのですが、1年生の内にマスターした方がよい子の特徴があります。
それは、ずばり「サッカーなどを習っていて運動好きな子」です。サッカーなどを習っていて運動が好きで得意でも、鉄棒やマット運動、縄跳びなどの器械運動がさっぱりな子は一定数います。なぜなら、練習していないからです。
サッカーなどをしていたらある程度走るのも、ゲームも、ボールも得意になります。しかし、サッカーなど好きなことに夢中になっていた分、今まで興味を持たず、こつこつ地道な練習を要する機械運動系とは縁遠いことが多いからです。
器械運動系と縁遠いお子さんは、クラスにたくさんいます。何が違うのか。
理由は大きく二つ。
・諦めが早い
今まで、難なくこなしてきて楽しんできた運動ですが、自分の思い通りにできないものに出会い、楽しくないことで諦めてしまいます。
「絶対できるようになる!」と悔しさをバネにできる子は、すぐにできるようになります。運動が好きで得意な子は、体の使い方がよく、うまくなるために見て学びということを自然と身に付けていることが多いからです。
ところが、少しうまくいかないからと、こつこつするということができなければ、できるようになるはずがないのです。
・プライド
さらに輪をかけて、運動が好きで得意であればあるほど、プライドが邪魔をしてしまいます。今までは、難なくできていたからです。運動で不得意なことに直面するわけです。
学年が上がれば、それはなお加速させます。中学年になれば、授業中でも鉄棒を握る時間が明らかに少なくなります。
「サッカーなどを習って運動が好きで得意な子」は、早めに練習に取り組ませて楽しさに気づかせた方が今後の鉄棒の授業を有意義なものにできます。
できれば1年生でさか上がりまではできるようになっておくのがよいです。少なくとも、2年生の春にはできるように目標を設定しておきましょう。できなくてもよいので、練習に取り組み、少しでも進めておくことが望ましいです。
運動が苦手な子は継続を味方に
「さか上がりは体が大きくなってからでは難しいから低学年でマスターしておいた方がよい」と思っていました。しかし、今までに鉄棒の授業を見てきて、大きくなってからでもできることを子どもたちから教えてもらいました。
4年生になって初めてできたという子もいます。体が大きな子もいました。
できるようになる子と、そうでない子の違いは何かというと、真面目に練習を続けてきたかということに限るような気がします。「真面目に」とは、先生が付いていなくても、言われたことを振り返りながら、忠実に練習をするということです。
・鉄棒にふとしたら触れている子(遠ざけない子)
・鉄棒シーズンは休み時間も毎日練習している子
・授業中で練習回数が多い子
鉄棒に触る回数と連続して練習している量です。
4年生になってできるようになった子は、1年生でできるようになったよりも4倍の嬉しさがあります。
運動が苦手であっても、できるようになりたいという思いが継続できれば、時間がかかるかもしれませんができるようになるのです。
さか上がりまでの練習方法
さか上がりができるようになるために、前まわり、そしてさか上がりと思われる方もおられますが、その練習はまだまだあとです。鉄棒に慣れることがさか上がりの近道ですので、順を追って力を付けていきましょう。
遊具で慣れる
園時代に、遊具で遊んですいすいできるという場合は大丈夫ですが、あまりやらなかった、怖がっていた、苦手で避けてきていたという場合は、まずは遊具から慣れるのがよいでしょう。
鉄棒の練習方法を学べる上り棒
上り棒をのぼれるようになるとよりよいですが、近くの公園にもなかなかないので難しいかもしれません。運動場開放されているのであれば、学校で練習するのもよいでしょう。
上り棒がすぐにできたお子さんは別として、上り棒が全くできない状態からできるようになるには、こつをつかむこととそれなりの自主練習が必要になります。まさに、鉄棒で必要な継続力と見てこつをつかむという力が付いてきているということです。腕の力もそれなりに付きます。
春から上り棒の練習を続けていれば、1学期の間、遅くても2学期にはできるようになります。2学期から上り棒の練習をしてから鉄棒練習をしていては、鉄棒練習が間に合いません。鉄棒練習もしながら、並行して上り棒の練習もしましょう。
必須のジャングルジム
ジャングルジムは体の支え方や遊具の扱い方を身に付けるのによいです。
・握る
・高さに慣れる
・3点支持で体を使いこなす
ジャングルジムを怖がるお子さんがおられますが、その場合、鉄棒にぶら下がるということしかできずに授業を終えることが多いです。基本的なことがまだ身に付いていないからです。
・鉄棒にとび上がるための体の使いこなしと力の入れ方
・両手で自分の体を支える力とバランス
ジャングルジムがのぼれるようになったら、体の使いこなし方などをマスターし、鉄棒の怖さもなくなったとまでは言えませんが、まずは、ジャングルジムで体の動かし方の基礎を学んでいきましょう。
ポイント2点を守れば落ちないことを教え、安心感を与えてあげましょう。
怖がっているところを無理にのぼらせると恐怖心が植え付けられますので、無理強いはやめた方がいいですね。練習をしても上まで行けない場合は、まずは肋木と言って、はしごのようなものがあればよいのですが、なかなか公園では見かけません。
すべり台などの階段をすいすい上がれるようにするところから始めるとよいかもしれません。休日などには少し遠出してアスレチックなどで楽しみながら高さに慣れるというのも一つです。
鉄棒あそび
鉄棒に慣れていないお子さんには、まずは遊びから入ります。
鉄棒に慣れる
鉄棒に上がるのは案外難しいです。支える力とジャンプ力とこつがいるからです。上がる前に、楽しみながら腕の力を付けていきましょう。
◆鉄棒にぶら下がる
・〇秒と決める
・足でじゃんけん
◆ぶらぶらブランコ→前にとぶ・うしろにとぶ
・「ここまでとぼう」と目標を決める
・どこまでとべるか競争
さかさに慣れる
運動が苦手なお子さんは、自分の体を支えることに自信がなく、さかさになってぶらさがることを怖がります。ですので、お家の方の手を、お子さんの手に添えてあげましょう。しっかり一緒に鉄棒を握ってあげ、「おさえているから大丈夫、落ちないよ」と声をかけて安心感を与えてあげるとよいです。
◆ぶたのまるやき
・片手を離してじゃんけん
自分でできるよになったら、片手をゆっくり離してじゃんけんをして楽しめます。
◆足ぬきまわり
片足の裏を鉄棒にかけて、反対の足を間に入れてくるりんとまわってみましょう。上達したら、足をかけなくても、ぶら下がりつつ両足を一気に入れてまわれるようになってきます。
反対向けの方がやりやすい子もいます。鉄棒を背にして両手を後ろにまわして握り、おしりから間に入れて空中で前転します。
おしりを思いっきり上げて、地面側に体を預けながら丸まらないとできないので、怖さがあるとできません。
ぶたのまるやきと足ぬきまわりができたら、鉄棒にもだいぶ慣れてきています。
◆足かけふり
片足だけかけて、さかさになってぶらさがり、ぶらぶらと自分でゆれる技です。足かけまわりにつながっていきます。
腕の引きつける力、体を起こすタイミングとのばしている足のふり方のタイミングが合わないと、自分ではブランコのようにふれないので、難しいです。
まだ鉄棒が怖い場合は、片足だけかけてさかさにぶら下がるところまでスムーズにできるよに練習してみましょう。
◆こうもり→こうもり下り・こうもりふり下り
手を地面について下りるところまでは難しいかと思います。手を離す時には、足を支えて「持っているから大丈夫だよ」と安心感を与えてあげるとよいでしょう。
◆地球回り
両足を鉄棒にかけて、さかさにぶら下がったまま、足の間で両手を交差し、足を浮かしたまま空中で1周まわる技です。1周したら交差していた両手がほどけるので、片手を離しながら再び両手を交差して、また1周まわります。延々と続けられます。
これは、さかさが怖くなくなったら、楽しめる技ですがこつがいります。
まわる時に、体を丸めておかなければなりません。さか上がりができなくても高度な技をしている感じがするので、マスターしてほしいです。慣れるとまわり続けられるので楽しいです。
前まわり下りの練習
「前まわり」と通常言っているのは、「前まわり下り」という技です。まわったら下りているからですね。
さか上がりの前段階で簡単のように思えますが、これがなかなかできないお子さんがおられます。ステップが必要です。
鉄棒に上がる
力のかけかたが分からず、また、力もなくぴょんぴょんしてしまいます。
台が用意できれば台で上がりやすいところまで高さを調節してあげれたらよいですが、準備が大変です。
そこで、鉄棒をはさんで向かい側に立ち支援します。上がろうとするところで、両脇を抱えて補助します。
つばめ
両手をのばし、足まで一直線に斜めになって姿勢を維持する技です。まさに、電線にとまっている「つばめ」のようです。体を支える練習になります。
それだけでなく、ゆっくり体を倒しながら、頭を鉄棒よりも前に出す練習をします。前まわり下りでは、怖くて頭が前に出せずにまわれないことがあるのです。
ふとん
鉄棒の上で布団干しのように、両手を離してぶら~んと力をぬく技です。
正しい位置に鉄棒がくるようにする練習です。前まわり下りでは、高さの恐怖心から頭の位置を下げようと体が丸まり、鉄棒がお腹に食い込んでしまうことがあります。
正しい位置でないと、バランスがとれずに両手は離せないのです。ただ、両手を離すのはかなり怖いです。体がつっぱっていては、とてもではないですが離せないです。
「上がる」練習と同じように、前に立って補助をしてあげましょう。手を添えてあげるだけでも、だいぶ変わります。そうしながら、バランスがとれるところをさぐっていきます。
まわる
つばめ、ふとんをマスターすれば、80%はできたようなものです。あとは、つばめ、ふとんでの注意点をまわる時にも活用することです。
①肘をのばして支える
②ゆっくり体を倒しながら頭を鉄棒よりも前にだす
③頭は下げずにその位置で、膝を曲げて、膝を見ながらまわる
足がつっぱっていると、回転速度が速くなり、落ちる状態になります。膝やお腹を見るようにまわりましょう。ゆっくりそーっと下りれるように練習します。
うまくまわれない理由として、手が回転できていないということがあります。怖いので、鉄棒をぎゅーと握ってしまっているのです。
ここでも向かいに立ち、両手を上から握ってあげて「持っているから大丈夫」と言って安心させてあげましょう。
家の中でのさかさ感覚に慣れる
さかさ感覚に慣れていないと、前まわり下りは怖いので、前転の練習をするとよいです。前まわり下りができなお子さんは運動が苦手ということが多いため、前転もできないということが多いのです。
地面で回転した経験がない中で、鉄棒の上で回転は怖いはずです。まず、前転ができるようにしましょう。
お家の方と向かい合わせになって、お家のかたの足をつたいながら、足ぬきまわりなどをしてみると楽しいと思います。
さか上がりの練習
ここから、いよいよさか上がりの練習です。
ポイントは
①姿勢
フォームは基本となります。
・手:順手・逆手、力が入りやすい方で握る。
・足:チョキにして前の足は鉄棒よりも少し前に出し、少し曲げる。
・脇:しめておく。
②オーバーヘッドキック&ジャンプ
片足でキックのイメージです。目線はつま先にすることで、足を蹴り上げることに意識が向きます。
・後ろの足を頭より後ろにあるサッカーボールを思いっきりキックするイメージで足を蹴り上げる。
・さらにジャンプを加えて、勢いを持たせる。
・前に出した足に体重をのせて、ジャンプを入れる。
・トン(踏み込みジャンプ)トーン(蹴り上げ)のリズム
キック場所に手などをかざしたりしながら、目標の場所を見えるよにしましょう。鉄棒の上くらいから、徐々に頭の上、そして頭の後ろと目標をステップアップするとよいです。
頭の後ろまでキックできるようになれば、地面までそのままキックを目標にします。イメージすることが大事です。
③下り方
せっかくまわれたのに、鉄棒にお腹がひっかかって上まで上がらないことがあります。低学年でよく見る光景です。体が小さくて頭が重い場合になりやすいようです。
・肘を曲げる
・足を真下にのばす
これをしてみてください。
お家の中での練習
◆後ろ回転
前まわり下りと同じように、家の中でも練習して、後ろ向きに回転するイメージを付けておくのがよいです。しかし、後ろまわりができないお子さんも多いかと思います。
その時にまずやるのが「ゆりかご」です。
①体育座り(お山座り)をする。(体を縮こませておく)
②手を足の前で組んだまま、後ろに倒れて前にまた起き上がる。(だるまさんのイメージ)
スムーズな動きになってきたら、ステップアップさせていきましょう。
- 床にお尻をつけずに座った状態でスタートする。
- 手は足の前で組まずに、後ろに倒れた時に、足が頭を超えて床につくように思いっきりのばす。足が床をタッチしたら、その勢いで立ち上がる。
できる限り遠くに足タッチするようにしていくと、自然と勢いで後ろにまわるようになります。そのまま回転すると首を痛める可能性がるので、勢いが付いてきたら、手は耳の横にして、床に付けるようにした方がよいです。
◆片足ジャンプ
足を蹴り上げる時に、片方の足で地面をジャンプするのは、感覚がわかずに難しいです。感覚を養う練習がお家の中でできます。
①姿勢
長座をして、両手で体を支えてお尻を上げます。その姿勢で、片足を上に上げる(蹴り上げている状態)
②ジャンプ
そのまま片足で上にジャンプをします。片足で地面を踏み込むイメージをつかみます。
さか上がりの補助
さか上がりの練習に便利グッズがあります。上達スピードがかなり上がります。
◆補助具
さか上がりの補助具としてベルトがある学校もあります。しかし、なかなかお家にはないでしょう。
タオルや手拭いを代わりにすることができます。タオルなどを腰の周りにまわして、両端を鉄棒にくくりつけます。
これで、お腹と鉄棒の位置が自然と近くなり体が持ち上がりやすくなり、まわる体感を得ることができるようになるのです。
さか上がりはこつがいりますが、感覚がしみつくと考えずともできてしまうものでもあります。体に覚えこませるのです。
はじめはタオルは短めにして体と鉄棒を密着させておきます。すると、強制的にまわるようになります。感覚をつかんできたら、次第にタオルを長くしていきます。お腹と鉄棒の距離が離れていくので難しくなっていきます。様子を見ながら長さの調整をしてあげるとよいです。
◆背中でまわす
お家の方が土台となって、背中でまわして上げるのです。
お子さんがさか上がりの姿勢をとった状態で、お家の方がお子さんと背中合わせになります。そして、後ろに両手を回して鉄棒を握ります。
そのままお家の方がお辞儀をして、お子さんを背中にのせてあげます。お子さんはお家の方の背中の上で足を上げて曲げます。
そのあと、お家の方が、お辞儀をした状態で鉄棒の向こう側にぬけます。同時にお子さんは鉄棒をまわり下ります。
これは、練習の合間のちょっとしたお楽しみですね。まわった後の、上がりきる練習にもなります。
まとめ
「さか上がり」は、それまでに様々な取り組みを通して力を蓄えていくことが必要となります。
「さか上がり」というのは、子どもにとって一大イベントでもあり、「できた」「できない」というのがはっきりとします。練習の成果が実ったということがはっきりとしており、喜びも倍増するのです。なかなかできないほど、お家の方と一緒に練習したことが大きな思い出となるでしょう。
是非、練習過程を楽しみ、そして、喜びを共有してもらえたらと思います。
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